日本考研|“传媒”与“艺术”的互融贯通:社会情报学vs表象文化论

 

作者简介

岡沢 亮

東京大学大学院学際情報学府博士課程修了、博士(社会情報学)。専門は社会学/メディア論。現在は明治学院大学ほか非常勤講師。
主要業績:
「ライトノベル、ケータイ小説、古典小説を読む若者たち——ジェンダーとオタク/サブカル自認」北田暁大・解体研編『社会にとって趣味とは何か——文化社会学の方法規準』河出書房新社(2017年)
「いかにして『異文化』のユーモアを理解するのか——コメディ映画鑑賞と字幕・吹替の技法」秋谷直矩・團康晃・松井広志編『楽しみの技法——趣味実践の社会学』ナカニシヤ出版(近刊)。

※ 译者注:日文的「情报」意义接近中文的“信息”一词。下文同。

 

社会情报学?表象文化论?

この文章では、社会情報学と表象文化論との関係について簡潔に解説します。両者はメディアへの着目や学際性という点において共通している部分もありますが、必ずしも研究のアプローチや重点に関して全て一致しているわけではありません。これらの点を理解するために、まずは社会情報学と表象文化論の双方を個別に見ていった上で、両者の共通点と差異について見ていきましょう。

本文将简单介绍社会情报学和表象文化论的关系。在探讨媒体的方法和跨学科性方面,两者共通的部分,但是研究的方法和重点并不是完全一致。为了能更好理解两者的异同,下文我将先单独解释什么是社会情报学与表象文化论,然后再说明两者的相同点与差异。
 

まず、東京大学大学院学際情報学府の社会情報学コースのウェブサイトに記載されている社会情報学に関する説明を参考に、社会情報学とは何かを理解しましょう。

首先,基于东京大学大学院学际情报学府的社会情报学专业网页上记载的相关说明,一起来理解下究竟什么是社会情报学。

 

「社会情報学」とは、メディアやコミュニケーションに関わる社会現象・文化現象、そして情報社会における諸問題を、「社会情報」という視点から学際的に分析する新しい学問です。社会情報学コースは、1)メディアとジャーナリズム、2)法・政策、3)経済・産業、4)社会・歴史、5)社会心理・情報行動、6)アジア・地域という6つの領域からなります。

“社会情报学”是一门基于“社会情报”这一视点、用跨学科的方法去分析与媒体与传播相关的社会现象、文化现象等信息社会里发生的各种现象的学问。社会情报学专业由1)媒体与新闻、2)法律和政策、3)经济和产业、4)社会和历史、5)社会心理和情报行动、6)亚洲和地区这六个领域组成。

 

このように、社会情報学の主要な研究対象はメディアやコミュニケーションであり、またそれらと関わる社会現象や社会問題であると示されています。こうした社会現象は、法律や政策、経済や産業、歴史、心理や行動など様々なものに関わっています。だからこそ、社会情報学は「学際的」だと言われています。すなわち、メディア研究やコミュニケーション研究だけでなく、法学、経済学、歴史学、社会学、心理学など様々な学問領域が交差するところに社会情報学があり、研究のアプローチも多様になっているのです。

综上所述,社会情报学的主要研究对象是媒体和传播以及与之相关的社会现象和问题。这种社会现象也和法律和政策、经济和产业、历史、心理和行为等各种各样的事物相关联。因此,社会情报学被称作是跨学科的学问。也就是说,社会情报学所包含范围里不只有媒体研究和传播学研究,也有法学、经济学、历史学、社会学和心理学等多种多样的学问领域交叉部分,因此其研究的方法也是非常具有多样性的。

 

例えば人々がスマートフォンやパソコンを用いて日々どのような行動を行っているか(どのような情報行動・メディア行動を行っているか)を知りたいのであれば、参与観察やインタビューやアンケートといった社会学的・心理学的手法を用いて調査を行いデータを収集することが必要になるでしょう。また、日本の情報政策について研究するのであれば、まずは法学の観点から関連する法律の読解をすることが必要になるでしょう。その上で、なぜそのような政策が重視されるようになったかという歴史的経緯であったり、その政策がもたらすと考えられる経済的メリットについても研究するのであれば、歴史学や経済学のアプローチも有効になるかもしれません。このように、メディアやコミュニケーションに関わる社会現象や文化を解明するためには、様々な学問領域のアプローチが必要になるのであり、社会情報学はその点を踏まえて研究を進めていくのです。

比如,如果你想知道普通人每天使用智能手机和电脑媒体都进行了怎样的活动(什么样的情报行动、媒体行动),那就有必要通过参与观察、采访、问卷等社会学与心理学的手法进行调查与收集数据。又比如,如果你想研究日本的情报政策的话,则有必要从法学的角度研读相关的法律条款。在此基础上如果试图研究政策逐渐得到重视的历史原因和背景或者政策带来的经济收益等,历史学和经济学的方法可能会很有用。如此,为了解释与媒体和传播相关的社会现象和文化可能需要各种各样学问、领域的方法,而社会情报学就是以此特征为基础逐渐发展开来。

 

 

では、それに対して表象文化論とはどのような学問なのでしょうか。日本表象文化論学会のウェブサイトに記載されている説明を見てみましょう。

那么,表象文化论又是一门什么样的学问呢。我们可以来看看日本表象文化论学会在网页上的介绍。

 

表象文化論は、「表象」(representation)の分析という観点から、文化事象全般に対して批評理論に立脚した学術的アプローチを行いつつ、大学における研究と社会での文化創造のアクチュアリティとの間の架橋を企ててきました。哲学においては「再現=代行」であり、演劇では「舞台化=演出」、政治的には「代表制」を意味するこの「表象」という概念が、さまざまな文化的次元の関係性の核を表わすキー・コンセプトとしてきわめて有用かつ生産的であることは、すでに十分に証明されたと言えるでしょう。
[中略]
本学会は、既存の学問・芸術ジャンルに囚われず、絶えず越境と横断を繰り返しつつ未知のフロンティアを開拓しようとする若々しい精神たちに、豊かで生き生きとした「交通」の可能性を開きたいと願っています。

表象文化论是以“表象(representation)”分析的观点、以批评理论为基础的研究方法、对所有的文化现象进行分析的学问。通过这种方法和对象设定,表象文化论力图充当连接大学里的学术研究与社会文化创造现实的桥梁。哲学领域的“再现=代行”、戏剧领域的“舞台化=演出”、政治领域里的“代表制”,各种各样的领域里都蕴含着“表象”这个词的概念。这个概念作为表达各种文化关系的核心概念被学术界视为并被各种既往研究所证明是极有价值并蕴含着巨大的研究潜力。
......
本学会不局限于以往的学问和艺术领域,并立志于不断跨越学科间的壁垒、开拓未知的领域,并以此展开更加充实生动的各学科间“交通”的可能性。

 

表象文化論は、映画や小説や演劇などの文化芸術に加え、テレビドラマやマンガなどのポップカルチャーを対象とし、それらの文化のあり方を研究する学問領域だと言えます。その際に「表象」という概念が一つの中心になってきたというわけです。また引用部にあるように、ここでも「既存の学問・芸術ジャンルに囚われ」ないことが重視されています。芸術作品にしてもポップカルチャーにしても、美学・芸術学、哲学、文学研究、社会学など様々な学問的アプローチから研究がなされてきました。表象文化論はそれらの多様なアプローチを踏まえて、より新しい仕方で文化を研究しようとしているのです。例えばある映画作品が社会における一般の人々にどのように楽しまれているのかを解明するにあたっては、哲学者の議論を参照したり美学のアプローチを採用した上で映画自体を分析し、その魅力を発見することも必要であるでしょう。その一方で、実際にその映画を消費した人やファンの感想が残されたテクストを分析することも有効でしょう。

表象文化论可以说是一门以文化艺术(电影、小说和戏剧等)和流行文化(电视剧和漫画等)为对象进行研究的学问领域。因此“表象”这个概念变成了这门学问的中心。另外,如上文引用所述,表象文化论也很重视“不局限于以往的学问和艺术领域”。无论是艺术作品还是流行文化,在这门学问里都是通过美学·艺术学、哲学、文学研究、社会学等多样的方法被设定为对象进行研究。表象文化论就是基于这种方法的多样性,力图寻求新的方法对文化进行研究。比如,为了探讨某部特定的电影作品如何被一般观众欣赏这个问题,可以参考哲学学者的讨论,用美学的方法对电影文本进行分析发现其中魅力;或者也可以分析记录消费电影的观众或者粉丝的感想的文本。

 

 

共同点与差异性

では、こうした社会情報学と表象文化論はどのような関係にあるのでしょうか。そこで、両者の共通点と差異を述べていきます。

那么,上述的社会情报学和表象文化论互相之间又有怎样的关系呢?以下是两者的共同点和差异性。

 

共通点の一つは、研究対象の中に広い意味での「メディア」が含まれることです。社会情報学は新聞や雑誌といった古くからあるメディアから、ソーシャルメディアのような比較的新しいメディアに至るまでを分析対象として扱いますし、そうしたメディアが社会の人々にどのように利用されているかといったメディア行動を分析することもあります。表象文化論もまた、写真や映画といったメディアにおける表象を扱う点において、メディアを一つの主要な研究対象とする学問分野だと言えるでしょう。また、もう一つの共通点として、すでに言及した「学際性」をあげることができます。社会情報学は法学、経済学、歴史学、心理学、社会学といった様々な学問分野と関わりますし、表象文化論もまた美学・芸術学、哲学、文学研究、社会学などの学問分野と関わる点で、両者ともに学際性を備えた領域であると言えるでしょう。

首先,共同点之一便是两者的研究对象里普遍包含“媒体”。社会情报学的对象范围从历史悠久的报纸杂志到社交媒体等新媒体皆有涉猎,社会情报学着重分析这些媒体如何被利用等媒体行动方面的课题;表象文化论则是因为着重探讨媒体(照片或者电影等)的表象,因此是把媒体作为一个主要的研究对象。另外一个共同点则是前文提到的“跨学科性”。社会情报学与法学、经济学、历史学、心理学和社会学等各种各样的学科相关,表象文化论则是横跨美学·艺术学、哲学。文学研究、社会学等学问领域。因此两者皆具有跨学科性。

 

その一方で、社会情報学と表象文化論の間には、学問としての目標や重点、あるいは研究アプローチに関して、いくつかの差異もあります。まず学問としての目標に関して、社会情報学が人々の行動やメディアの社会的位置付け等を重視する傾向があるのに対して、表象文化論はメディアや文化作品の内容の解釈により重点を置く傾向があります。とりわけ表象文化論においては特定の芸術作品や文化の内容的解釈や分析を中心とする論文が多いのに対し、社会情報学においてはそうした作品や文化を扱うにせよ、それらを鑑賞し消費する人々の考えや行動に焦点化する論文が多いと言えます。もちろんこれらは相対的な違いに過ぎませんが、両者を区別して考える際の一つの参考になるでしょう。

而说到差异性,社会情报学和表象文化论之间,在作为学问的目标、重点或者研究方法的侧面上有着若干差异。比如,作为学问的目标层面上,社会情报学倾向于研究人的行动和媒体的社会位置,而表象文化论则将重点放置于媒体和文化作品内容的解释上。特别是表象文化论这个领域里,关于特定艺术作品和文化的内容解释与分析的论文很多,但是社会情报学领域的成果则多是研究文化作品的受众的观念和行为的论文。当然这点只是相对的不同点,但是这个差异点可以作为思考如何区分两者的一个参考。

 

また、もう一つの違いとして、学際的な両者の中でも特に中核となる学問分野の違いがあります。社会情報学は経済学・社会学・心理学といったいわゆる社会科学的な学問分野を中核とし、統計的分析などの量的手法を取り入れることが多いです。それに対して表象文化論は哲学や美学といったいわゆる人文科学的な学問分野を中核としており、量的な手法を排除するわけではありませんが、やはり質的な手法が中心となると言えるでしょう。

再者,两者虽同是跨学科的学问,但其核心领域却大不相同。社会情报学是以经济学、社会学、心理学等社会科学领域为核心,因此统计分析等量化研究的手法被大量使用。而表象文化论则是以哲学和美学等人文科学为核心,虽然并不能说完全拒绝量化手法,但其主流的分析手法仍然是质性分析

 

最後にもう一度まとめておきますと、社会情報学と表象文化論は、広い意味での「メディア」を対象とする点と、その「学際性」という共通点があります。他方で、学問としての重点や、研究アプローチが社会科学的なものを中心とするか人文科学的なものを中心とするかという点において差異もあります。

最后,总结一下社会情报学和表象文化论的异同。广义上来讲,两者在以“媒体”为对象这一点和“跨学科性”这一点上相同。但是,在作为学问的重点和研究方法的层面,一个是以社会科学为中心、另一个以人文科学为中心,两者有所差异。